私たちのものづくりに共感して頂いた各分野のプロフェッショナルとともに、こだわりや思いを詰め込んだ「長く愛用できる道具」をカタチにするプロジェクト「PRO CRAFT」。vol.4のプロフェッショナルは、スポーツデザイナー・ボイスアクター大岩 Larry 正志さん。
プロセスの最後となる後編では、たくさんのサンプル修正を経て完成した商品のディテールや、ラリーさんのコメントをお届けします。
>前編はこちら
>中編はこちら
完成した「観戦用バッグ」のディテール
完成したバッグは、見た目こそトライオンらしいオーソドックスなトートバッグですが、これまでのトライオン製品ではあまり見られなかった仕掛けやギミックが盛り込まれた製品になりました。
1:断熱シート付きペットボトルホルダー
何より独特なのは、保冷機能を持ったペットボトルホルダーが付いていることでしょう。ペットボトルや水筒、傘などを入れるためのホルダーは、最近のバッグでは定番の機能ですが、このバッグに付いているホルダーには、市販の保冷バッグなどに使われている断熱シートが使われています。なので、ここに保冷材などを入れて、缶ビールを冷えた状態で持ち歩くことも可能なのです。もちろん、冬場には温かい飲み物を入れておくこともできます。また、缶が結露しても荷物を濡らすことがなく、熱い飲み物を入れても、荷物が熱を持つこともありません。
2:オリジナルチケットホルダー
そして、ラリーさんこだわりのチケットホルダーが凝っています。最近のチケットは長めのものもあるということもあって、スマホも入る大きめのサイズにして汎用性を高めただけではありません。裏には、ラリーさんデザインの「larry」の文字が入ったロゴプレートが付いています。同様に、ラリーさんによる架空の野球チーム風にデザインされたトライオンのロゴ入りステッカーも付属。野球的なイメージを強調すると同時に、ラリーさんのシグネチャー・モデル的な感じに仕上げています。
ストラップは、バッグのショルダーストラップと兼用する仕様となっています。
「チケットホルダーを付けると、かなりコストが上がるということで、結構悩んだんですけど、これがあるから『観戦用バッグ』になるんだと思ったんです。で、会社ではIDカード入れて、夜はここにチケットが入る。そして、片手にビール持って、肩からバッグを提げて、チケットもさっと取り出せるという感じにしたかった」とラリーさん。
チケットホルダーが表のポケットにぴったり入るサイズなのは偶然だったそうです。ラリーさんによると、「ぼくは、ダラーンとホルダーを下げるのが好きなので、ポケットに入るかどうかは意識していなかったのですが、使う人の好みに合わせて選択できるのはいいですね」と話されていました。
3:持ちやすさにこだわったハンドル
ハンドルの長さも、大岩さんの要望で22cmと長めに取っています。手で持っても肩に提げても使える長さに調整しました。さらに、チケットホルダーと兼用のショルダーストラップも付いていますから、たすき掛けにすることも可能。上部にはファスナーが付いているので、新幹線などで網棚に置くときなどにも安心です。
「もっとも、このバッグは、上からどんどんモノを入れていけるのが魅力のひとつなので、普段は開けておくことをお勧めしたい」とラリーさん。上部のファスナーをつけるかどうかは、かなり悩んだのだそうです。
4:チームユニフォームが入るメッシュポケット
内装がメッシュになっているのも、バッグとしてはかなり珍しい仕様です。これもラリーさんのこだわりポイント。タオルや応援用ユニフォームを入れることを前提にした、通気性優先の構造なのですが、ここまで思いきったメッシュの使い方は、現場に足を運んでいる方ならではの発想ですね。同様に、床に置くことは前提にして底鋲を付けつつも、底板は着脱式にしたのもラリーさんのアイデア。荷物が多い時、少ない時、どちらの状態でも、肩に提げた時にスムーズに持ち歩けるようにしたいという要望でした。
他にも、写真左上から時計回りに、①開口部はファスナー付き ②底びょう付きでスタジアムで直置きも安心 ③底板は取り外し可能 ④両サイド外側にもオープンポケット付きと、充実の機能。
トライオンとしても、ここまで内装に様々な機能を詰め込んだバッグはほとんど作ってこなかったので、その意味では新しい挑戦と言えるようなバッグが出来ました。それでいて、見た目は普通のトートバッグに見えるのが、トライオンらしいと思っています。
ラリーさんからのメッセージ
黒革に黒のファブリックの組み合わせなんかは、スーツにも合うので普通にビジネストートとしても便利だと思うんです。その上でスポーツ観戦にも使える機能が入っているという感じで使っていただけたらと思います。もう一方の、タンの革と黒のファブリックのモデルは、ある程度のフォーマルでも使えますけど、それこそパーカーにだって合いますし、革の色がいかにもグローブで、実際にグローブに使われている革ですから、野球観戦に持っていけば気分が上がると思うんですよ。
チケットホルダーの裏のロゴも、グローブに使われているワッペンと同じ大きさなんです。ジッパーの引き手の革ひもとか、ペットボトルホルダーの紐に付けた革とか、細かいところにもグローブ感を出せたと思います。そういう細部に凝ったり、機能を色々詰め込んで頂いたのに、持ってみたら思ったより軽いのが素晴らしいと思いました。
3wayで、仕事カバンとして使っても、ちゃんと大人らしい雰囲気になりますし、野球観戦のみならず、他のスポーツ観戦にも使えます。他にも会社帰りにフットサルをするプレイヤーの方なんかには、メッシュ部分に着替えを入れられるからおすすめだし、音楽のライブイベントにも使える。そういう多様性みたいなことは最初から考えていたので、いろんな形で使っていただければと思います。
会社帰りのスポーツ観戦に使える専用バッグ。ありそうでなかった発想から生まれたバッグは、幼い頃から野球に親しみ、今では各球団のユニフォームも手がけるラリーさんだからこその、細かな気配りが随所に光る仕様になりました。
野球好きスタッフに、実際に野球観戦に持っていって使用感を試してもらった際に、「スタジアムの狭い座席下にもスッと収まり、さらに応援に熱が入ってバッグに足が当たった時もナイロン面が大きいことで革を汚す心配がなかった」と語ってくれたのが印象的でした。
野球に限らず、さまざまなスポーツやレジャーシーンでも活躍間違いなしのバッグを相棒にこれからのオンシーズンをお楽しみください。