TRION NOTEブログ

2022-12-02
読みもの

PRO CRAFT-vol.2(中編)

PRO CRAFT-vol.2(中編)

私たちのものづくりに共感して頂いた各分野のプロフェッショナルとともに、こだわりや思いを詰め込んだ「長く愛用できる道具」をカタチにするプロジェクト「PRO CRAFT」。シリーズ第二弾のプロフェッショナルは、プロダクトデザイナー秋田道夫さん。

前編では、秋田さんとトライオンの出会いや秋田さんご自身のこと、開発に至るまでのストーリーをお届けしました。

今回の中編では、具体的な開発の道のりをお届けします。

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アイデアを形に

初顔合わせの後は、とにかくサンプルを作ってみようということになりました。秋田さんの「革が壁になっているようなデザイン」というアイデアを活かすバッグが実際に作れるのかどうかは、とにかく作ってみないと分からないということもありました。また、ファーストサンプルを作ることで、お互いのイメージのすり合わせをすることもできると考えたのです。

革は、やや質実剛健なムードのものを選び、自立させるため厚手に仕上げました。革製のファイルボックスのようなイメージです。芯材をしっかり入れたため、文字通り壁のような見た目にはなりましたが、かなり重さもありバッグとはまだ言えない段階の手探り状態。

ファーストサンプル。まだハンドルもついていない状態

出来上がったサンプルは、私たちとしては、秋田さんに言われた通りに作ったつもりでしたが、それが正解とも不正解とも思えない感じでした。ただ、今までに無いものができたし、今後も、そういう感じで進むのではないかという予感はありました。

ファーストサンプルの感触

ファーストサンプルを受け取った秋田さんは、自分が思っていたものとは、あまりにも違っていたのでビックリしたのだそうです。

「あんまりビックリしたので、納富さんに電話してしまいました。トライオンさんにどう返事をしていいものか、分からなくて相談したいと思ったんです。一所懸命作っていただいたのは伝わるし、ガッカリさせたくはないし、どうしましょう、という感じでした」と秋田さん。

「納富さんは、それを聞いたら、笑って、『僕の時もファーストサンプルはビックリしましたよ』と仰いました。ファーストサンプルは、お互いの中にあるイメージの違いをハッキリさせるもの程度に考えればいいんです、という話でした。それで安心した私は、自分が考えていたものと何がどう違うのかを、具体的にトライオンさんにお伝えしました。」

秋田さんが驚いたのは、その革の厚みと、全体にボッテリしたフォルムでした。「それこそ、これでは古いファイルボックスのようだと思ったんです」と秋田さん。

秋田さんCGとファーストサンプル

最初に提示していたCGは、革を想定していたものではなかったものの、秋田さんの頭の中にあったのは、もっとハリのあるピンとエッジが立ったシルエットでした。それが革で実現できるか、という部分がポイントだったため、このサンプルを見た時、そのアイデアは実現不可能なのかと思って、ガッカリしたのだそうです。

「このプロジェクトは諦めようか、違うアイデアに変えようかと思っていたところでしたが、納富さんに言われた通り、とにかくこちらの言いたいことを全部伝えました。壁というより、二枚のプレートと言った方が分かりやすかったかもとか、モノはあまり入れないのが前提とか、そういったことを丁寧にお話しました。」

秋田さんが最初の打ち合わせで既に提示していた「かたやわらかい」という部分が、実際にバッグを手にしてみると、とても重要な指摘だったことに気がついたと言います。そういうことが分かったり、お互いの考えのすり合わせが出来るという意味で、ファーストサンプルは実は出来不出来とは関係ない部分で、とても重要な意味を持つことを私たちも再認識しました。

「実は、もう違うコンセプトにしようかとも考えていて、納富さんにも『秋田さんデザインの、新しい時代のセカンドバッグとかあったら嬉しいです』と言われたりしていました。この時の会話も、この後のカバン作りに影響していったのも面白かったですね」と秋田さんは振り返ります。

近づくカタチ

「バッグだから、沢山モノを入れるのが当たり前だし、壁だから、ドッシリしているものだと思ってしまっていました」と語るのは、サンプル製作を担当したトライオンの五十嵐。「秋田さんからのファーストサンプルの感想を聞いて、ハッとすると同時に、面白いと思いました。」

そこで、セカンドサンプルでは、完全に発想を変えることに。革は、強度がありながら柔らかみもある上質なカナディアンキップレザーを採用。更に、薄い一枚革で、中に芯を入れずに成形するという方法を取りました。それでも自立するように、ハンドルの下に支えになるように細長い芯を入れ、エッジは折り返すことで、ピンとしたシルエットを実現。


「かなり思い切った設計です。普通のカバンでは出来ないし、ただ置いておくだけでも型崩れする可能性もありますから、使う人を選ぶ仕様だと思います。それでも、こういう芯を入れないカバンを作ってみたいという気持ちはありましたし、楽しかったですよ。」

方向性を転換し生まれたセカンドサンプル。「かたやわらかい」印象が加わった

届いたセカンドサンプルを見た秋田さんは、もうこれで良いんじゃないかと思ったといいます。すぐに納富さんにも電話をして、「すごく良い出来ですよ!」と伝えたそうです。

もう完成したようなものだと思いつつも、やはり実際に手に取って使ってみると、少しは気になる部分がでてきます。それは、とても細かいサイズの調整だったり、ロゴの大きさや位置、ハンドルの形といった部分です。それらをお聞きした上で、最終となるサードサンプルが完成。秋田さんは、最後の打ち合わせのために、大阪本社に来訪されました。


ファーストサンプルを通して、お互いの共通認識を固めていった製作過程。最初は実現不可能かと思えた道のりも、発想の転換など試行錯誤を経て、最終系にいよいよ近づきました。

後編では、いよいよ完成に向けてまでの最終調整と、完成した秋田さんとのコラボバッグをご紹介、発売スタートします。お楽しみに!

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