普段は表に出ることのない「トライオンで働くヒト」にスポットを当て、お届けするシリーズ。第三回目は、ベトナムの自社工場、トライベトでGeneral Director として働く中村さんについてお届けしています。
前編では、中村さんの幼少期の野球との関わりからトライオン入社まで。今回の後編では、トライオンで働く姿勢やこれからについて語ってもらいます。
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現地で取り組んだ現場改革
赴任後、まずは生産量を上げることに注力しました。
赴任当初の現場は生産数量、生産性、品質と全てを一気に改善しようとしていたため、その結果全てで中途半端になっていました。まずはしっかり工場として請け負った数量を納期通り納めること。原理原則に立ち返るところから始めました。その上で品質向上、生産性の改善、という具合にアウトプットが上がる大前提の基礎を作り、次に体制、仕組み作りと進めていきました。
現場管理では、レイアウトの見直しから設備のリノベーションなどを実施。目線レベルで遮るものを無くして、ONEストレートラインでモノの動きをシンプルに見える化し、マネージメントをしやすくしました。
この辺りからインセンティブ制度と相まって社員のモチベーションUPに繋がり、大きな生産性と品質の向上に繋がりました。今思うと、私がというより、若くて優秀なベトナム人スタッフ達と知恵を出し合いながら私も一緒に成長させてもらっての改革でしたね。実力に見合った形で、出来る事から順を追って泥臭くやってきた結果だと思います。
従業員の意識改革と仲間としての繋がり
泥臭いと言えば、家庭訪問です。何それ?って感じですよね(笑) 。
赴任当初の一番の問題点は、従業員の離職・欠勤率が高く計画通りに生産量が上がらないことでした。メコンデルタの農村地域では、会社に属して働いたことのない親御さんの元で育った従業員がほとんどで、会社で働くことのメリットを知りません。そのため、日曜日に従業員のところへ家庭訪問し、彼らの通勤の道のりと住居、家庭環境など、とにかく彼らのことを知るために家を回りました。中には1、2時間の道のりをバイクで通勤している従業員もいて、「こんな所まで日本人が来てくれた」とすごく歓迎してくれました。
そして本人や親御さんに、福利厚生などいかに安定した収入と環境があるかを説明して回りました。家庭訪問した従業員の多くは、今でも長く働いてくれています。
距離が縮まると言えば、結婚式ですね。これもよくわかりませんよね(笑) 。
独身で入社した従業員も10年経つと皆結婚適齢期となって子供もできてきます。少なく見積もって年に5回は結婚式に出席し、赴任して10年経つので50回は結婚式に出ています 。
こうやって距離が縮まっていくと、苦楽を共にするファミリー感が出てきて会社へのロイヤリティも生まれます。
その他にも「社員旅行」「遠足」「誕生日会」から「ランチのグレードアップ」に至るまで、結束が固まりそうな行事はなるべく叶えてあげるようにしています。だって、1日のうち働く時間が多くを占める生活の中で、その時間がしんどいばっかりじゃ嫌になっちゃう。そこにリフレッシュを入れてあげるのも私の役目だと思っています。ただビジネスにおいては是々非々ですよ。勿論厳しいことも言うし、受け入れてもらう。ビジネスが成功してないと楽しい予算も持ってこれないですから。
あとは、社内で野球チームも結成。ちゃんと格好いいユニフォームまで用意しました。きっかけは、ポジションごとにグローブの大きさや型が変わるというのがなぜかを、実戦で覚えてもらおうと思ったことです。あと、私が個人的に野球する相手が欲しかった(笑)。
まずはルールを教えるのが本当に大変で…。野球のルールって複雑なんですよね。お陰様でなぜ外野のグローブは長いのか、内野は小ぶりなのか、捕球しやすい「ポケット」があるグローブってどういうものか、工場では教えれない事を実戦を通して理解してくれました。
今では毎年ホーチミンから日本人ソフトボールチームのSaigon All Starsの皆さんを招待して交流戦をし、第10回を迎えた現在も続いています。
トライオンで働く意義
やっぱりいい会社、健全な会社は、みんながモチベーション高く仕事をして、全部がうまく回りますよね。良い環境が良い人材を作り、良い仕事へと繋がる。
訪問して下さったお客様には「この工場にモノを作ってもらいたい」と思ってもらえるよう、常に綺麗で活気ある現場に保つよう努めています。言葉ではなく現場を見てもらう。それが我々にとっての営業でしょうか。
従業員の皆には、少し大げさですが「君たちが世界トップ品質のものを作りマーケットを支えている」と、意識を持ってもらいたくて言っています。“We’re the world No.1 glove manufacturer”だと。
個人的な僕のモチベーションとして、野球好きなのもあるけど、作るヒトも使うヒトも「人がハッピーになれるものづくり」がトライオンの根幹にあること。その方が今は魅力かもしれません。
従業員がちゃんと幸せなのかなって、偽善ではなく心からそう思うんですよね。もちろんそれは、自分も含めて。幸せな人が、良いものを作る。幸せな人だから良いものを作れる。だからモノづくりの前にトライオンはヒトづくりをしているんだと思う。そういうヒトたちがモノを作っている。まさに“Quality people produce quality products.”です。
あとは、そうやって苦労して作り上げた商品がエンドユーザーの元へ渡り、その先に色々なストーリーがあるところが好きですね。それはプロ選手だけでなく、高校生や子供たちまで、さらには親子で心通わせるキャッチボールとか、様々なストーリーがあるじゃないですか。色々繋がってて…。そんなのを想像するのがね、いいですね。自己満足ですが(笑)。
そういうストーリーの一端を担えているところ。うまく言えないですが、そういったところも踏まえてですかね、トライオンで働く意義って。
これからの発展へ向けて
トライベトと同じ地域にあるカントー大学に、度々ゲストスピーカーとして登壇しています。外国企業に投資してもらえるよう環境を整備し、地元の学生に活躍の場を与えるため雇用機会を拡大させるのが政府の重要な役割であると熱弁しています。
こういう今話しているような内容をベトナム駐在の日本人の方に話すと、「面白い」って言ってみんな聞いてくれます。
さらに、トライオンのバッグについてもよく話をします。部署の違うグローブ側から話すとまた違ったストーリーになるのか、どういう背景でどういうヒトたちがバッグを作ってるかを聞いてすごくバリューを感じて下さり、「バッグが欲しい」と言ってくれます。すぐさま、日本の直営店とオンラインサイトをご紹介させて頂いています(笑)。実際、沢山の方々が日本に帰国後、直営店に来店してくれたり、ネットでも購入頂いて感謝しております。
現地に根付いて発展しているところ、そういうものづくりをもっと語っていけたらいいなと思っています。
トライオン本社にあるショップ、やっぱりいいんですよね。ドアを開けると革のいい匂いに溢れてて。工場とは違うおしゃれな空間に素敵なバッグが沢山あって。いつも帰国したらショップで油を売ってるので、バッグ部門の人たちには迷惑な奴かも知れません(笑)。
やっぱり常に成長してる、元気なモノ作り工場からの商品ってバリューとして見えるから、マーケットで分かります。
色々とお話ししてきましたけど、月並みですが、この会社で働けてよかったなぁと、自分も皆も思ってくれるような会社であればいいなと思います。そういう会社でありたい。そういうヒトの集まりで良いビジネスを続けていければと思います。
個人としては特に何か成し遂げたとか無くて、ずっとOngoingなんですよ。まだまだやるべきこと、やりたいこと、なりたい姿は先にあって。年齢は大分上がってきましたけど、変わらず覇気を持ってチャレンジャーであり続けたいですね。
〈編集後記〉
コロナになってから、なかなか実際にお会いできるタイミングがなく、久しぶりに日本へ帰国された機会に、今回の話をお聞きしました。
中村さんのリーダーシップと、言葉の端々に滲み出る熱い思い、そして多くのスタッフを抱える責任感。
「たくさんの苦労はあったけど、成長させてくれたベトナムには感謝しかない。ここで働くことが誇らしいと従業員が言ってくれることが、何よりの励みになっている」と語る中村さんに、こちらも胸が熱くなりました。
そして、こんな素敵な会社で働いていることに、新たなやりがいを感じました。
>前編はこちら
私たちの働き方や思いに共感し、野球グラブの企画営業として、楽しみながら一緒にフィリピン・ベトナムで挑戦してくれる仲間を募集します。
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トライオン採用メールアドレス
saiyou@trion-net.co.jp