私たちのものづくりに共感して頂いた各分野のプロフェッショナルとともに、こだわりや思いを詰め込んだ「長く愛用できる道具」をカタチにするプロジェクト「PRO CRAFT」。シリーズ初回のプロフェッショナルは、ライターの納富さん。
前編では、納富さんとの開発に至るまでのストーリーを、中編では、具体的な開発の道のりをお届けしました。
最後となる今回の後編では、様々な修正を繰り返して完成した商品の、納富さんの実際の使用感や商品詳細をお伝えします。
毎日愛用しています
文:納富 廉邦(ライター)
出来上がったバッグは、届いたその日から、ほぼ毎日、使っています。普段使いにも仕事にも使えるバッグを作ったので、当たり前と言えば当たり前ですが、それでも、こんなにも日々、使えるものだとは思っていなかったので、自分でも少し驚きました。
イベント取材にも、インタビュー取材にも、カフェでの原稿書きにも、散歩にも、古書店巡りにも、ライブや観劇にも、風が強くても、雨が降っていても、このバッグひとつで出かけられるのです。それは、つまり、どこに出掛けるにせよ、その時に持って行きたいものがきちんと収納出来ているということなのでしょう。
私が出掛ける時に必ずバッグに入れる物は、
□ 手帳(M5サイズのシステム手帳)
□ ボールペン(ゼブラ「ライトライトα」)
□ ミニポーチ
□ カードケース
□ モバイルwifi
□ 無線イヤホン
(スマホ、財布、キーケースは服のポケットに入れています。)
です。これらは、バッグの前面ポケットと中のマチ付きポケットに入れています。その上で、取材ならカメラとiPadとボイスレコーダーとノートを、単に原稿を書くとか、カメラマンさんがついてきてくださるインタビューなどの場合は、カメラは持って行かない、または小さなレンズを付けていくなど、変化します。
外で、ガッツリと原稿を書きたい時は、iPad+キーボード(PFU「HHKB Pro Hybrid type-s」)か、ノートパソコンを入れます。仕事先で頂く書類やサンプルなども入れて持ち帰ることが出来るので、このバッグだけで、ほとんどの仕事に対応出来るのです。
バッグ自体が自立して、上部が開いているので、インタビュー時や、カフェなどで足下にバッグを置いて物が出し入れ出来るのもポイントだと思っています。
プライベートでも使えます
これが散歩になるとカメラと交換レンズをもう一本に水筒、その代わりiPadは無しとか、買い物なら必ず持って行くもの以外は何も入れないとか、適宜、入れるものが変わりますが、どういう場合でも、これでは大きすぎるとか小さすぎると思うことが無いのです。
本来、仕事道具をワンパッケージで持ち歩きたいという目的で考えたバッグなのですが、買い物に役立つことには、自分でもちょっと驚いてしまいました。
少し大きなカメラも入れられるようにと大きめにしたマチ幅のおかげで、古書市を回って、何冊も本を買ったり、スーパーで大袋のお菓子や、箱入りのチーズなどを買っても、エコバッグを出すことなく、このバッグに入れられます。バッグの構造が、箱形でマチが容量に応じて膨らむようになっているので、かなりの量が入るのです。
また、表と裏が厚みのあるスムースレザーなので、中に壊れ物を入れても安心で、パンパンに詰め込んでもバッグ自体は型くずれしません。
これは、当初は狙っていなかったのですが、実際に使ってみて、その容量の大きさや、中に入れたパンや紙箱などが潰れにくいこと、買ったものを上からどんどん放り込める気軽さなどは、箱形にして開口部をトートバッグのような開き方にしたり、表裏をスムースレザーにしたことなどの仕様だったからこそです。
開口部がマグネットで留まるのも、開け閉めをほとんど考える必要がなく、買い物に向いていると感じます。展示会取材などで次々と頂くカタログを、その都度、入れるのにも便利なので、同じ形で大きなバッグを作っても面白いかも、いやいや、それは普通のトートバッグじゃないかなどと、ぐるぐる考えています(笑)。
シーンで使い分ける2Wayスタイル
実は、ストラップを短くして、トートバッグのように肩からさげるのも使いやすいのではないかとは、開発段階からトライオンさんとも話していたことでした(そういう使い方も想定して、ストラップは着脱できるようにしました)。なので、実際に、付属のストラップを一番短い状態にして、試してみたところ、これが、とても良い感じなのです。
仕事用フル装備だと重いのでたすき掛けの方が良いのですが、買い物やカメラ無しの仕事などでは、むしろ、このトートスタイルの方が色々とメリットがあることに気がつきました。
何より、電車に乗ったり、カフェに寄ったりした時にショルダーベルトが邪魔にならず、手提げカバンのようにも使えるし、歩きながらの物の出し入れも、脇の下に開口部があるのはちょうど良い感じなのです。そして、この位置にバッグがあると、よほどの大雨でもなければ、傘さえさせば、開口部のファスナーを留めなくても中に雨が入りません。
今や、私は、普段はトートスタイルで持ち歩いて、荷物が重い時だけ、ストラップを長くしています。バッグが縦長なので、歩きやすく、また脇の下での収まりが良いため、見た目も良い感じになるのです。トート用の専用のストラップが作りたいくらいです。
と、色々、考えながら毎日、愛用しています。やや私の好みに偏ったバッグではありますが、ありそうで無い、個性的ながらTPOを選ばず使えるバッグになったのではないかと自画自賛しています。
縦長のカタチが好きな理由
縦長であることは賛否両論あると思うのですが、世の中に横長の良いバッグは沢山あるので、私は縦長の良いバッグが欲しいと思ったのです。
電車に乗った時、カフェなどで足下に置く時、肩から提げた時、などは、縦長の方が邪魔にならず、また、持っている側としても取り回しが良いと思うのです。
これがブリーフケースだと、身長が低い人にはバランスが悪くなるかも知れませんが、ショルダーバッグなら問題ありません。更にトートスタイルで持てば、むしろ小柄な人の方が似あう感じになります。
カバンの底が遠くなって、物の出し入れがしにくくなるということも、実際に使っていてほとんど感じたことがありません。まあ、それは、小さなものはポーチなどに入れたり、上部と前面のポケットに入れているからというのもありますが、深いといってもせいぜいA4のファイルくらいの長さですから、実は、少し大きな横型のブリーフケースと、長さは大して変わらないのです。リュックに比べたら、かなり短いです。
後はデザイン的な好みですね。私は、ノートは横長が好きなのですが、バッグは縦長か正方形とかが好きなのです。これは多分、これまで縦長のバッグは選択肢が少なく、また、縦長のショルダーバッグはあっても、ほとんどがA4が入らないという不満がずっとあったということなのだと思います。このバッグと同じ構造で横長を作るのも面白そうだと、縦長が出来た今は思ったりもします。
最後に、納富さんはこのバッグにぴったりな名前をつけてくれました。
その名も「NOTE BAG」。
シンプルでいながら、ライターの「道具としてのバッグ」にふさわしい素敵なネーミングで、その名前を聞いた瞬間、このバッグに生命が吹き込まれた気持ちになりました。
ライターとして、納富さんのこだわりがこれでもかと詰まったバッグ。
私たちにとっても、革の魅力の再発見であったり、自分たちだけでは思いつかなかった新しい発想を取り入れる良い機会となりました。なりより、私たちのものづくりの「良いところ」を、プロフェッショナルの新たな目線から引き出してもらうことができました。
ファクトリーメーカーであるからこそ、「個」の思いを叶えるものづくりができると自負し、その思い(こだわり)に共感してくれた「誰か」にとっても、使いやすい「道具」となることを願っています。