トライオンのコンセプトである「“道具”として寄り添い続ける」。
野球グラブのファクトリーメーカーから始まった私たちは、野球をするために欠かせない“道具”であるグローブと同じように、バッグも日々の暮らしに欠かせない“道具”として考えています。
道具は、すぐ壊れてしまったり、高価すぎたり、扱いにくくては意味がありません。毎日繰り返し使うことで愛着が湧き、丈夫で長く使い続けられるものであるべきです。
その信念のもと、“道具”として長く使い続けて頂けるよう、使う人それぞれに寄り添った真摯なものづくりとアフターフォローを大切にしてきました。
日々、お客様のお声を聞いて商品開発を進める中で、私たちのものづくりの姿勢に共感いただいた様々な分野の方から、「こんなアイテムが欲しい」と声を掛けて頂く機会が増えていました。
それらの内容はどれも、私たちでは気づかなかった視点でグラブレザーの魅力やものづくりの技を引き出すアイデアで溢れ、新たな可能性を感じました。
そこで、私たちのものづくりに共感していただいた各分野のプロフェッショナルとともに、こだわりや思いを詰め込んだ「長く愛用できる道具」をカタチにするというプロジェクトを始めることにしました。その名も「PRO CRAFT(プロクラフト)」。プロフェッショナルならではの新たな視点と、トライオンの技術が掛け合わさった、新しいものづくりプロジェクトです。
これから、どんな方々と、どういう思いで、どんな所にこだわってアイテムを作り上げていくのか、紆余曲折も含めたものづくりのストーリーを、皆さんにお届けしていきたいと思います。
第一回のプロフェッショナルはこの方
私たちが最初にお声掛けしたのは、フリーライターの納富 廉邦さん。
ライターとしてご活躍されている納富さんは、以前からトライオンのものづくりに共感頂き、様々な媒体に私たちのブランドや商品について執筆いただいたり、また昔からトライオンを愛用くださっていました。
その納富さんが、プロフェッショナルとして考える長く愛用できる“道具”とは何だろう?そんな思いからスタートしました。
ライターとしてトライオンを知り尽くした納富さんに、私たちとの出会いから今回の企画商品完成まで、開発ストーリーを執筆いただきました。
全3回シリーズでお届けします。
トライオンとの出会い
文:納富 廉邦(ライター)
大阪の大好きな文具店フラナガンさんで、A3サイズの革のバッグを見つけて、その革の質感の良さと、他には無いサイズに惹かれたのが、トライオンさんのバッグに出会った最初でした。
その後、付き合いがあったハイタイドさんの展示会などでトライオンというブランドについて知り、すぐに縦型のブリーフケースを購入。ずっと、欲しかった革製の縦型のバッグが、当たり前のように、しかも安価で購入出来たことに驚き、そこから、トライオンさんとのおつき合いが始まりました。
ライターとして使いたいバッグ
展示会などにお誘い頂き、その都度、面白いバッグがあるものですから、それらのバッグを試しては、紹介記事を書いたり、友人に勧めたりしていたのですが、5、6年ほど前の展示会で、ひとつのショルダーバッグに出会いました。トライオンさん得意のシボ革を前面と背面に使い、側面にパネルレザーを配した、B5サイズの縦型ショルダーバッグでした。
iPadが入れられて、気軽に持ち歩けるショルダーバッグが欲しいと思っていたタイミングだったので、「これはいいですね!」と思わず言ってしまったのですが、細かく見ていくと、微妙に、私が求めていたのとは違っていました。
それは当然というか、私の個人的な要望は、私が使いたいシチュエーションでの便利であって、世の中の人々の便利とは違うのは当たり前です。
バッグメーカーとして、様々なユーザーを考慮した上で作られたバッグは、そうそう個人の趣味にピッタリになるわけはなく、だから、私たちはいくつもバッグを買って、用途に応じて使い分けるのです。
それにしても、そのショルダーバッグは、私にとっての理想がどういうものなのかを、私に再認識させるような仕様でした。なので、その時は、「例えば、シボ革を側面にして、表をパネルレザーとかスムーズレザーにすることは出来ないんですか?」と尋ねるに留めました。
開発までの道すじ
その後も、トライオンさんは傑作と言えるバッグを沢山発表し、例えば、現在は当たり前になった、薄マチのビジネスリュックを他社に先駆けて発表し、大ヒットさせたり、パネルレザーを軽量化したパネルライトを開発したりと、私たちをワクワクさせてきました。
自慢を少し言うと、パネルライトのトートバッグの、ハンドルに付けたマグネットは、実は私のアイデアです。開口部をマグネットで留めるなら、ハンドルもマグネットで留めるべきだという私の唐突なアイデアを、トライオンさんは、すぐに採用し、製品化してくださいました。そのバッグは、当然、私の愛用バッグのひとつになりました。
そういう経緯もあったからか、トライオンさんから、新しく色々な専門家が「その職業だから欲しいアイテム」を作るシリーズを起ち上げるから一緒にやらないかと声を掛けていただき、「やります!」と即答したのが、今回のバッグ開発の始まりでした。アイデアは、惜しいと思ったショルダーバッグを見て以来、ずっと考えていたので、すぐにまとまって、最初の打ち合わせに臨みました。
初回は、私たちの新たなプロジェクトの思いから、ライター納富さんとトライオンの関係、開発に至るまでのストーリーをお届けしました。
次回はいよいよ具体的な制作過程をご紹介します。
納富さんのアイデアとは果たしてどんなものか?どんなアイテムが生まれるのか、お楽しみに。