TRION NOTEブログ

2022-02-25
読みもの

【トライオンで働くヒト】また通いたくなるお店を目指して

【トライオンで働くヒト】また通いたくなるお店を目指して

バッグメーカーであり、野球グラブメーカーでもあるトライオンでは、大阪本社、フィリピン・ベトナム両工場を合わせ約30人の日本人が働いています。
工場で勤務するフィリピン人、ベトナム人を含めるとグループの従業員は総勢約1,800人。多様でユニークな働く人たちの手によって、私たちの製品は作られています。

そんな普段は表に出ることのない「トライオンで働くヒト」にスポットを当て、魅力をお届けするシリーズです。

シリーズ2人目は、大阪本町にある唯一の直営店「FLAGSHIP SHOP」で店長を務める浦さんをご紹介。商品はもちろん、革の素材とお手入れが好きで、レザーワークショップを開催したり、限定商品の企画開発を行うなど多岐にわたる仕事に携わってきました。
この3月で退職し、新たな道へ進まれる浦さんに、お客様と最も触れ合う場所で働く醍醐味や大切にしていることを聞きました。


震災とトライオンとの出会い―きっかけと原点

トライオンに入社するに至ったきっかけは東日本大震災です。前職の休憩時間に、テレビで突然震災の映像が目に飛び込んできました。それから漠然と「人生、一度くらい好きな仕事をしてみたい。」という気持ちが沸いてきました。
自分がそういう考え方をするタイプだと思っていなかったので驚きましたが、学生時代にのめり込んだファッションに関わる仕事がしたいと思い、求人を探し、目に留まったのがトライオンの直営店スタッフの募集でした。

トライオンフラッグシップショップ
オフィス街の本町にある直営店

自社でつくったものを販売するという仕事内容に興味がわきました。面接で、どのような服装で店頭に立つのが望ましいか質問したところ、「浦さんが朝起きて、引き出しを開けて、その日のフィーリングで着たいと思った服を着てきてくれたらいいよ」と言われました。
初めて会った人に、そんな素敵な言葉をかけられる人が働いている世界があったことに驚きましたし、個性の豊かさを大事にする会社の空気感を感じました。「自分らしく生きていったらいい」とありのままを認めてもらえたような気もしました。
受かるかどうかは別として、良い言葉をもらい、そんなメーカーがあることを知れたのが嬉しかった。今もそこがトライオンのイメージの原点で、私の人生にとっても大切な感覚になっています。

好きこそものの上手なれ―マルチな業務を学んだ日々

直営店の販売員から始まり、9年半で様々な仕事を学ぶ機会に恵まれました。商品の知識は主に先輩方から教えていただきましたが、自分で休日に他社バッグメーカーさんのお店をめぐり、革の特徴や色落ちのことなどを聞いてまわりました。お客様に聞かれてその場で答えられないことがあっても、なるべく自分で調べて後からお答えするよう努めました。


革のお手入れ方法を学び、接客やイベント開催に活かせたのも、お客様にケアのコツを知っていただき、革鞄と一緒に良い時間を過ごしてもらいたいという思いからでした。鞄の修理をお預かりし、お返しする場面から学ばせて頂くことも多くありました。

コロナ前は定期的にレザーケアワークショップを開催

直営店限定商品の企画開発と生産・販売計画や、ブログやメルマガ、SNSを使った発信をはじめ、様々なオンライン関連の業務も担当しました。目の前にいるお客様という不定期の時間軸と、1日から1年単位の幅広い時間軸で動く業務を自己管理しながら同時並行するのが大変で、慣れるまで1年以上かかりました。


元々面倒くさがりで、最低限しかしない私が、気付けばあれこれ頑張っていて、何度も不思議に思いました。たぶん、革のことも、お客様のことも好きだから、「やってみよう」と思えたのだと思います。

さまざまな直営店限定商品を企画しました
撮影の最後にみんなで記念撮影

モノを通してお客様とつながる時間が天職

それでも、私の中での最優先はやはり、お店でお客様と接する時間でした。色んなお客様がいて、反応も人それぞれ。対話を通して自分の意外な一面に気付くこともあって、とにかく面白い。ゆっくりとした時間の中で生まれる一対一の空間に飽きることはありません。


商品を買う前と、使ったときのギャップがないように伝えることに注力してきましたが、最近はお客様の話を聞く力が大事だと感じます。痒い所に手が届く接客というか、知識ともまた違う、「この人は話を分かってくれている」という安心感や、見に来ただけの人にも「行ってみて良かった」と、良い後味を持ち帰って欲しい。自分本位にならないよう気を付けながら、記憶に残り、また行きたい、通いたいと思っていただけるように努めてきました。

お店に一度足を運ばれた後、私を指名して電話注文をくださる地方のお客様や、ご出張で来阪した際に必ずお立ち寄りくださるお客様にも恵まれました。実店舗は、お客様一人ひとりと直に接することができる一つの「現場」。現場でしか感じられないことが必ずあると思います。

SHOP前での浦さんコレクション

誠実より誠実なバッグ

トライオンの商品は、そこまでするかというくらい正直に作られています。誠実より誠実、裏表がないのは社風にも繋がるところがあります。譲らない軸みたいなものはあるけど、着飾ったり見栄を張ったりしない。
残革から作られるパネルシリーズや、グラブレザーを昇華させたドキュメントシリーズは、限りあるものを最大限活用するにはどうすればいいか、この素材をもっと活かすにはどうすればいいか、というモノづくりの真理を貫いているからこそ続いてきたのだと思います。

これからはそんなトライオンのバッグたちを、外から違った視点で見ながら応援していきたい。新しく店長になる菊野さんにはトライオンユーザーのお客様との関係を引き継いで頂くと同時に、ご自身のスタイルを確立し、新しいFLAGSHIP SHOPに塗り替えていってほしいと願っています。たまに懐かしくなってお店のイベントやポップアップに立ち寄ってしまうかもしれません(笑)。

新しく店長になる菊野さんと

ご愛用頂いているお客様へ

直営店にお越し頂くお客様は、皆さんとてもユニークで、素敵な方ばかりでした。「革」はそれぞれ個性的で、時に不便を感じることもある素材ですが、そこに親近感や愛着を抱く感性をお持ちだからでしょうか。クセのある私のことも同様に、優しく受け止めて頂いた場面がたくさんありました。
不思議なことですが、お客様お一人おひとりとお話した記憶やバッグを通して、ご縁がずっと繋がっているような気がしていて、いつかまた、ふらっとお会いできるような気持ちでいます。きっとその時も、トライオンのバッグやお財布を使ってくれていて、私はなんだかくすぐったい気持ちになる。そんな様子が瞼の裏に浮かんできます。
9年半、本当にお世話になりました。トライオンを介して、最高に楽しい時間を過ごさせて頂いたこと、たくさんのユニークで素敵な人たちに出会えたことに、心から感謝致します。